ことのはぐさ

2017.12.09 弁護士 坂田宗彦|「月給25万円ー残業含む」との雇用契約で残業代はどうなる?・・・「定額残業手当」の有効性


 デパートに出店した鶏肉販売店の従業員が、残業手当の支払いを求めた裁判の大阪高等裁判所の判決を紹介します。この事件では、雇用契約書に、就業時間として「(午前)7時から(午後)7時30分まで、週6日」、賃金として「月給25万円ー残業含む」と記載されていました。経営者側は、残業が発生していること自体は認めつつ、その残業代は月給25万円に含まれていると主張しました。従業員側は、それでは、残業手当部分がいくらか明らかでないし、また想定している残業時間数もはっきりしないとして、25万円が全部基本給として扱って残業手当を支払うべきであると主張しました。
 原審の京都地裁は、上記の従業員側の主張を採用して(残業時間数については縮小して認定)、残業手当の支払いを命じました。そして、控訴審の大阪高裁はこの判決を支持しました(大阪高裁・平成29年3月3日判決、労働判例1155号5頁以下)。
 「定額残業手当」については、高知県観光事件などの最高裁判所の判決によって有効とされる要件が示されています。簡単に要約すれば、.通常の労働時間(所定労働時間と言います)の賃金に当たる部分と、残業時間の割増賃金に当たる部分が判別できることです。ですから、残業手当の金額や想定した残業時間数が明確でなければ、「定額残業手当」だといっても無効となります。その結果、残業手当を一切支払っていないこととされて、全部が基本給扱いとなり残業手当の支払いが命じられます。紹介した判決も、最高裁の示した要件に従ったものです。 ちなみに、本件では、給与明細には、基本給18万8000円、残業手当6万2000円と区分して記載しておりました。しかし、判決は、雇用契約書(さらに就業規則や求人広告)に区分が明記されていない以上、後に給与明細で明確にされたとしても残業手当とみることはできないと厳しく判断しています。
 なお、想定残業時間数や手当の金額を明確にした定額残業手当の制度自体は違法ではありません。但し、割増賃金として支払っている一定額が、労働基準法第37条の規定する金額を下回っている場合は、差額を支払う義務があります。


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