相談事例

遺言・相続

 このような場合について、下記のように法律上、相続人となるべき人が定められています。本件の場合、祖父(故人)の子である父は法定相続人ですが、既に亡くなっているので、あなたがその代わりに相続人となります。

 

〈故人に配偶者がいる場合の法定相続人〉
順位①配偶者と子(※1)
  ②(子がいない時)配偶者と直系尊属
  ③(子、直系尊属共いない時)配偶者と兄弟姉妹(※2)
  ④(子、直系尊属、兄弟姉妹共いない時)配偶者のみ

 

〈故人に配偶者がいない場合の法定相続人〉
順位①子(※1)
  ②(子がいない時)
  ③(子、直系尊属共いない時)兄弟姉妹(※2)直系尊属

※1;亡くなった方の子が既に死亡していたとしても、子の直系卑属(孫など)がいれば、②ではなく、亡くなった子の代わりにその直系卑属が相続人となります。
※2;亡くなった方より前に死亡している兄弟姉妹がいたとしても、その子がいれば④ではなく、亡くなった兄弟姉妹の代わりにその子が相続人となります。兄弟姉妹には異母・異父兄弟姉妹を含みます。

 いずれの手続がよいかは、その人の借金の額、収入状況、財産等を考慮して選択することになりますので、一度ご相談いただくことをお勧めします。

 遺産を具体的にどのように相続するかについて、遺言書で定めてある場合、それに依ることができますが、そのような遺言書がない場合、法律は、相続割合を定めています。

 

〈故人に配偶者がいる場合の相続割合〉
順位①配偶者と子(※1) 配:子=1:1
  ②(子がいない時)配偶者と直系尊属  配:直=2:1
  ③(子、直系尊属共いない時)配偶者と兄弟姉妹(※2) 配:兄弟姉妹=3:1
  ④(子、直系尊属、兄弟姉妹共いない時)配偶者のみ  配=全部

 

〈故人に配偶者がいない場合の相続割合〉
順位①子(※1) 子=全部
  ②(子がいない時)直系尊属  直=全部
  ③(子、直系尊属共いない時)兄弟姉妹(※2) 兄弟姉妹=全部

 

※1;子が複数いる時は子の法定相続分を頭数で割ります。但し、非嫡出子の場合、嫡出子の法定相続分の1/2となります。
※2;兄弟姉妹も複数いる時は兄弟姉妹の法定相続分を頭数で割ります。但し、異父・異母兄弟姉妹は両親とも同じ兄弟姉妹の法定相続分の1/2になります。

【亡父名義の不動産の処分】

 実家の父は15年前に亡くなり、昨年の夏に母も亡くなりました。
 私、弟、妹とも実家を出て所帯を持っており、空き家となった実家の土地・建物を売却する話が持ち上がっています。土地・建物の名義は亡父のままですが、このままで売却できるでしょうか。

 亡父名義のままでは売却できず、相続人である誰かの名義に変更しなければ売却することはできません。
 したがって、3名の相続人間で遺産分割協議をし、誰の名義にするのかを決め、相続登記をする必要があります。
   名義変更後速やかに売却を考えているのであれば、売却代金を誰が取得するのかを念頭に置いて名義変更したほうがいいでしょう。
   たとえば、あなた一人の名義にして売却し、あとでその売却代金を弟や妹に分配すれば、贈与税の問題が生じるからです。なお、第三者に売却すれば、譲渡税がかかる場合があることにも留意が必要です。

【『相続分がないことの証明』という文書が送られてきた】

 幼少の頃両親が離婚し、私は母のもとで育てられ、父とは長い間音信不通でした。
先日、父の再婚相手(後妻)から手紙が届き、父が亡くなったことを知りました。また、手紙には、「土地・建物の名義を自分に変えたい。いくらか判つき代を払うので、別紙の証明書に署名と実印を押して送り返してほしい」とありました。
 同封の書類を見ると、「私は被相続人から生前贈与を受けており、相続分がないことを証明します。」と記載されていました。
 私は父から生前贈与を受けたことはありませんが、仮にこの書類に署名・押印して送り返せば、どうなるのでしょうか。

 本来、相続人全員で遺産分割協議書を作成しなければならないのですが、登記実務上、「相続分がないことの証明」は遺産分割協議の便法として認められており、相続人が遠隔地に住んでいる場合などに活用されています。
 この書類に署名・押印した場合の法的効力には争いがありますが、少なくとも、他の相続人からの証明書が揃えば、後妻は土地・建物の名義を変更することができます。
 したがって、もし後妻が提示する判つき代に納得できないのであれば、署名・押印はせず、遺産分割の話し合いをしたほうがいいでしょう。

【相続財産の範囲~賃料収入など~】

 亡くなった夫には、自宅のほかに賃貸アパート、預貯金、株式などの財産があります。ほかに夫を被保険者とする入院保険や生命保険などもあります。これらはすべて相続財産に含まれるのでしょうか。賃貸アパートの家賃収入も相続の対象ですか。

 相続の対象になる財産について、まず説明します。


              (基本的にはすべての財産が相続の対象になる)
   民法896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」としており、原則として、亡くなった人のすべての財産が相続の対象となります。
 従って、質問の自宅や賃貸アパート、預貯金、株式などは相続の対象となります。借地権や借家権も相続の対象になります。相続するのに貸主の承諾はいりません。

 

(賃料は遺産分割協議が成立するまでは各相続人にその法定相続分に応じた権利がある)
 逆に、賃貸アパートの貸主の地位も相続の対象となります。
 それでは、賃貸アパートを遺産分割により相続した人は、被相続人が亡くなった時から遺産分割の協議が成立するまでの家賃も相続するのでしょうか。
 この点について、最高裁判所は、その間の家賃と賃貸アパートとは別の財産であると考えるべきであり、その間の家賃は、それぞれの相続人が、法定相続分に応じて取得すると判断しています。
 ですから、被相続人が亡くなってから遺産分割の協議が成立するまでは、それぞれの相続人が相続分通りの家賃を受け取る権利があることになります。

 

                            (預貯金について)
 預貯金も相続の対象になることはすでに述べたとおりです。この預貯金に関する権利について、最高裁は、従来、被相続人が亡くなると同時に、各相続人に法定相続分通り相続されるとしていました。しかし、平成28年12月19日、最高裁大法廷で判例変更がされ、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期預金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である」としました。ここで「遺産分割の対象となる」としているのは、相続人全員で預金等の分割について、協議を行い、協議が成立して初めて、銀行等に預金の支払いを請求できるということです。

 

                            (借金について)
 注意しなければならないのは権利だけではなく「義務」も相続の対象となることです。被相続人の借金、保証人としての債務も相続の対象になります。

 

                          (生命保険・入院保険)
 生命保険金の受給権は、保険契約に基づいて指定された受取人の固有の権利であり、相続の対象ではありません。生命保険金の受取人が亡くなった人の相続人であっても、同じことになります。従って、受取人である相続人は相続を放棄しても、生命保険金を受け取る権利は残ります。これは、被相続人が生前借金をしており、相続放棄をしなければ借金を相続するような場合に重要になります。このような場合、生命保険金の受取人である相続人は、相続の放棄をして借金の支払義務を免れた上で、生命保険金を受け取ることができることになりますが、生命保険金の受給権が受取人固有の権利である以上、法律上何ら矛盾しないのです。
 他方、入院保険の保険金は、入院した人に受け取る権利がありますので、その人が亡くなった場合には、その保険金は相続の対象となります。この場合には、相続放棄をした相続人は、その保険金を受け取る権利はありません。

【相続人による預金調査】

 親が亡くなりました。家の近くのA銀行B支店に遺産となる預金があるはずなのですが、同居していた長男が通帳を見せてくれません。調査する方法はありますか。

 預金のあると思われるA銀行B支店に戸籍事項証明書をもって、自分が亡くなった親の相続人であることを証明して請求すれば、取引履歴も開示されるようになりました。
 以前は弁護士会による照会に限られましたが、平成21年の最高裁判決により相続人が直接開示を求められるようになっています。 詳細は銀行に問い合わせてください。

 忘れがちですが、相続ではプラスの財産のみでなく借金のようなマイナスの財産も相続財産として相続の対象となります。
 安易に貯金などの相続財産を使ってしまったりすると、後で借金の存在が分かっても相続放棄できなくなる危険があります。
 しかし、音信がほとんどない親族の場合、なかなか資産状況が分かりません。
 こうした場合、まずは、家庭裁判所への相続放棄の期間伸長申立をお勧めします。原則として、1回目の申請は認めてもらえます。その間に、遺言書が残されていないか、自宅や公証役場に照会をかけてみることの他、金融機関に残高照会をかけたりします。
 ただ、忘れてならないのは、信用情報機関への照会です。
 日本には、全国銀行個人信用情報センター、シー・アイ・シー、日本信用情報機構(JICC)、株式会社日本信用情報機構といった信用情報機関があります。
 現在どこにどのような借金があるかは当然として、過去にどこに完済したのかも一定の期間分は開示してくれます。
 そして、いわゆるサラ金・クレジット系の負債の場合、過払債権が相続財産になることもあります。

 相続人となる子は、親に属した一切の権利義務を承継することになるのが原則です。忘れがちですが、相続ではプラスの財産のみでなく借金のようなマイナスの財産も相続の対象となります。ただ、相続したくない場合には、これを拒む方法があります。
 具体的には、全く相続しない(相続放棄)ことができます。また、親の借金については相続財産で支払える限りで支払い、元からあなた(子)が持っていた財産からは支払わないという条件付きの相続(限定承認)をすることもできます。


 ただし、これらは、いずれもあなたが自己のために相続の開始があったことを知ったときから、3ヶ月以内に家庭裁判所に対して申し出なければなりません。 この期間内にこの手続をしないと、単純承認とみなされ、原則通りに一切の権利義務を承継してしまいます。ご自身の事案で具体的にいつが起算点になるのか、 弁護士に相談してみてください。
 期間内に判断できない場合、家庭裁判所に相続放棄の期間伸長を申し立てることができますので、忘れないようにしましょう。

【相続放棄の起算点】

 突然請求書が届きました。開けてみると、「あなたの叔父に500万円を貸していたが叔父が2年前に亡くなった。叔父の妻子が相続放棄をし、あなたが相続人になるので請求する」とのことでした。
 私の父(叔父の兄)は亡くなっており、父方の祖父母もとうの昔に亡くなっています。叔父とは全くつきあいがなく、亡くなったことも知らなかったのでびっくりしています。
知り合いに相談したところ、「3か月以内であれば相続放棄できると聞いたことがあるけど、2年もたっているからなあ。」と首を傾げられました。
 私は支払に応じなければいけないのでしょうか。

 おたずねの事案ではあなたも叔父さんの相続人になりますが、債権者の文書を受け取った日から3か月以内に、叔父さんが亡くなった住所地の管轄裁判所に相続放棄手続きをとることにより、支払を免れることができます。
 相続放棄をするための書類の書式は裁判所のホームページに掲載されています。大切なことは、「相続の開始を知った日」の欄に「債権者の文書を受け取った日」を記載することです。

 設問の場合、あなたは、生命保険契約の効果として保険金請求権を取得すると解されており、保険金請求権は相続の対象となる遺産の範囲から外れることになります。したがって、相続放棄をしつつ、生命保険金を受け取ることは可能です。
 なお、債務についても相続の対象となるため、あなたと子ども(第一順位の相続人)が相続放棄した場合、第二順位の相続人(通常は夫の両親)が相続し、第 二順位の相続人が既に亡くなっている場合、あるいは相続放棄した場合には、第三順位の相続人(夫の兄弟姉妹。場合により甥姪。)が相続することになります。したがって、完全に債務を免れるためには、彼らも相続放棄をする必要が生じてくることに注意が必要です。

【相続財産の評価時】

 被相続人が亡くなった時に相続が開始されますが、相続人の間で遺産分割の協議がされるのは、その後になる場合があります。その場合、相続財産の価値は、どの時点で評価されるのでしょうか。被相続人が亡くなった時ですか、それとも、遺産分割の協議が成立するときですか。

 被相続人が亡くなった後に、その財産の価値が大きく変動する場合があります。株式や不動産などがその典型です。その場合、具体的な分与額を計算する前提として、株式や不動産のどの時点での時価を基準とするかが問題となります。この点については、実際に遺産を分割する時とするのが通説であり、実際の裁判所での取り扱いの大勢を占めています。遺産分割の協議をするのにはかなりの時間がかかることがあり、相続人の死亡したときと分割をするときとでは、遺産の時価が大きく変動することがあり、その変化を考慮に入れなければ、相続人間の公平がはかれないというのがその理由です。
 ここで注意を要するのは、共同相続人の具体的相続分を算定する場合は、相続開始時が評価時とするのが通説であり、裁判所の実務だということです。


                      (具体的相続分の算定とは何か)
 民法は遺産分割について共同相続人間の法定相続分を定めています。
 しかし、相続人の中に、被相続人から特別な利益を得ている者が居た場合(特別受益)や、特に相続財産の維持保全に寄与した者がいる場合(寄与分)、単純に法定相続分の割合で遺産を分割すると、当事者間の公平をはかれません。そこで、遺産分割を勧めていく際には次の様な作業を積み重ねて、具体的相続分を計算していきます。
 相続開始時の遺産評価額3000万で、相続人が妻Aと子B・Cの3人。Aには寄与分100万、Bには特別受益200万があり、遺産分割を実行する時期には遺産の資産価値が上がって3500万になった場合を例に引きながら以下ご説明しましょう。


                    (遺産分割による取得額の計算方法)
①みなし相続財産の計算
    相続開始時の遺産の評価額-Aの寄与分+Bの特別受益=みなし相続財産
    ex)3000万―100万+200万=3100万
②具体的相続分額の計算
    Aの具体的相続分額;みなし相続財産×1/2+Aの寄与分
    ex)3100万×1/2+100万=1650万
    Bの具体的相続分額;みなし相続財産×1/4-Bの特別受益
    ex)3100万×1/4-200万=575万
    Cの具体的相続分額;みなし相続財産×1/4
    ex)3100万掛ける1/4=775万
③具体的相続分率の計算
    Aの具体的相続分率;Aの具体的相続分額/ABCの具体的相続分額の合計
    ex)1650万/(1650万+575万+775万)=1650/3000
    Bの具体的相続分率;Bの具体的相続分額/ABCの具体的相続分額の合計
    ex)575万/(1650万+575万+775万)=575/3000
    Cの具体的相続分率;Cの具体的相続分額/ABCの具体的相続分額の合計
    ex)775万/(1650万+575万+775万)=775/3000
④現実的な取得分の計算
    遺産分割時の遺産の評価額×各人の具体的相続分率
    ex)Aの受取額=3500万×1650/3000=1925万
    ex)Bの受取額=3500万×575/3000≒670万
    ex)Cの受取額=3500万×775/3000≒904万
    
   以上のように、相続開始時の遺産・特別受益等の価値を基準として、共同相続人の具体的相続分を算定し、その割合に基づいて、遺産分割時の遺産の価値に基づいて分割がなされることになります。

 当事者間で話し合いが成立するのであれば、それに基づいて分割を行えば足ります。しかし、こうした話し合いがまとまらない場合、遺産分割調停・審判と いった手続きがあります。調停は、調停委員の仲介を経て当事者の話し合いにより裁判上分割の方法を決定する手続きです。審判とは、当事者間の話し合いでは なく裁判官に遺産分割の判断をして貰う手続きです。

【特別受益】

   相続の際に「特別受益」というものがあり、遺産の分け方に影響すると聞いたことがありますが、「特別受益」とはどのようなものですか。

 民法は、相続人が複数いる場合にその法定相続分を定めています。しかし、被相続人が生前、一部の相続人にお金を贈与していたような場合、あるいは、遺言書で一部の相続人に有利に遺産を遺贈するような場合、それを考慮に入れなくて遺産分割をすることは相続人の公平を害することになります。そのような場合に、民法は903条で「特別受益者の相続分」について定めています。


                          (特別受益とは何か)
 特別受益者とは、被相続人から遺贈を受けたり、生計の資本等の為に贈与を受けた相続人を指します。具体的には以下のような場合があります。
・結婚、養子縁組の時の、持参金、支度金、結納金など
・子供が世帯を持つために住宅の贈与を受けたり、事業資金の贈与を受ける。

・高等教育の教育費
・生命保険の受取人
  生命保険については、最高裁判所は、死亡保険金請求権は、特別受益には当たらないとした上で、共同相続人間に到底是認することができない著しい不公平があると認められる特段の事情が存する場合には、特別受益に準じた取り扱いをすると判断しています(平成16年10月29日最高裁第二小法廷決定)。そして、特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率、保険金受取人である相続人およびその他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等に照らし判断すべきものとして、考慮要素を例示しています。

 「特段の事情」にあたるとする裁判例には以下のようなものがあります。
(1)平成17年10月27日東京高等裁判所決定
  (家庭裁判月報58巻5号94頁)
      遺産総額 1億0134万円
      保険金額 1億0129万円
      遺産総額に対する保険金額の比率 99.9%
(2)平成18年3月27日名古屋高等裁判所決定
  (家庭裁判月報58巻10号66頁)
      遺産総額 8640万9190円
      保険金額 5154万0846円
      遺産総額に対する保険金額の比率 59.6%
  この例からすれば、生命保険が遺産の全額の60%程度となれば、この保険金が「特別受益」に準ずる取り扱いがされる可能性があります。


                    (特別受益者の相続分の算定方法)
  おおざっぱには以下のように算定します。
  特別受益者の相続分=(遺産総額+特別受益)×相続分-特別受益

 これは寄与分の問題です。被相続人の財産形成に協力した者とそうでない者の間では、法定相続分どおりでは実質的な不公平が生ずる場合があります。そこであなたが生前に、法律の規定により遺言をすることで、それを変え、長男の取り分を多くすることができます。
 遺言がされなかった場合でも、生前に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養監護その他の方法により、被相続人の財産の維 持または増加につき特別の寄与をした者があるときは、この寄与分はその寄与をした相続人が取得し、その余の相続財産を寄与者を含めた相続人が法定相続分に よって分けることとなります。
 寄与分の有無や額について争いがあるときは、寄与分を求める相続人が家庭裁判所での審判で決めてもらうことができます。詳しくは、弁護士に相談してみてください。

 一般論として、相続の場面において自分の意思を実現するには「遺言」によることが適切ですが、とりわけ、ご相談の事案は、「遺言」がもっとも効果を発揮するケースです。
 親子間の相続などの場合は、遺言があっても、相続人には最低限の権利として「遺留分」があるため、その請求がなされれば、一定の譲歩を余儀なくされることになります。
 ところが、相続人が兄弟姉妹(または甥、姪)だけの場合は、遺留分がないため、遺言どおりの処理ができるからです。
 遺言の種類は、大きく分けて、①自筆証書遺言、②公正証書遺言がありますが、①の場合、民法が定める要件を欠いたり、あとになって本人が書いたものかどうか争いになる可能性があるため、公証人役場で作成する②によることをお勧めします。
 法律事務所でも公正証書遺言作成のお手伝いができますので、ご不明な点がありましたら、お気軽に法律事務所にご相談ください。

 お父さんが残された遺言書は自筆証書遺言書というもので、これを保管していた人や発見した相続人は、家庭裁判所に提出して「検認」という調査をしてもらう必要があります。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立ち会いのもとに開封しますので、勝手に開けないでください。
 検認の申し立てがされれば、家庭裁判所は、相続人に立ち会う期日を通知し、遺言の形式や記載内容などを調査し、それが遺言をした人の筆跡かどうかを検認 期日に、立ち会った人に質問し、記録に残します。検認が済めば、遺言書に基づいて遺贈や相続の手続きができます。
 しかし、検認は、遺言の有効・無効を決定する手続きではありませんので、後日それを争うことができます。
 なお、勝手に開封された遺言書も、それだけで無効になるわけではありません。

 平成元年以降に全国の公証人役場で作成された遺言書については、どこの公証人役場でも検索して探すことができるようになっています。法定相続人であることを証明する書類をもって、お近くの公証人役場に行かれると、どこで、いつ遺言書がつくられているか調べてくれます。また謄本も請求することができます。

 お父さんが遺言しないで死亡された場合には、遺産は、Aさんが全体の2分の1、あなたとお姉さんが全体の4分 の1ずつ、をもらえます(法定相続分)。しかし、このお父さんのように遺言をしておけば、法定相続分と違う分配をすることができます。お父さんはその方法 をとられたわけです。
 遺言がある場合でも、兄弟姉妹以外の相続人(たとえば子・親・祖父母・孫・配偶者など)には「遺留分(いりゅうぶん)」があり、遺言によっても侵害できない最低限の取り分が決められています。この事例では、あなたとお姉さんの法定相続分のさらに2分の1(要するに全体の8分の1ずつ)が遺留分です。遺留分は自分の遺留分を侵害する遺言書があることを知ったときから一年以内に、遺留分の主張をした人にだけ確保されます。主張の方法は、Aさんに対する内容証明郵便でするのが一般的です。
【遺言の検認】

 遺言書の検認とはどのようなものですか。検認の目的は何ですか。

 公正証書以外の遺言書を保管している人は、遺言書を作成した人が亡くなったことを知った後、遅れることなく、遺言書を家庭裁判所に提出して、遺言書の検認を請求しなければなりません(民法1004条)。ですから、公正証書遺言は検認をする必要はありません。
 封印のある遺言書は、相続人またはその代理人の立ち会いのもとに家庭裁判所で開封しなければならないとされています。検認を怠ったり、封印のある遺言書を家庭裁判所以外で開封した場合は5万円以下の過料に処せられます。
   検認は、遺言書の偽造などを防ぎ、遺言書を確実に保存するための手続、つまり、証拠を保全するための手続です。ですから、検認がされたとしても、遺言書が有効であることが認めらたことにはなりません。遺言書の有効性に争いがある場合には、別途、裁判により決着がつくことになります。
   遺言書の内容を実現するための相続の手続は、検認がなされた後に行われることになります。

【遺言執行者】

 遺言書に自分が遺言執行者として指定されていることが分かりました。具体的にどのような作業をしなければならないのでしょうか。また、遺言の内容によっては遺言執行者がいないと実現出来ないものもあると聞きました、遺言書に遺言執行者の指定がない場合、どうしたらいいでしょうか。

        (遺言執行者とは)
 民法は、遺言執行者は、遺言の内容を実現するための一切の権利義務をもつと定めています(民法1012条)。
      (遺言執行者を選任する方法)
 遺言執行者を選任する方法は以下の3つです。
 (1)遺言者が遺言書で遺言執行者を指定する場合
 (2)遺言者が遺言書で遺言執行者の指定を第三者に委託した場合でその第三者が遺言執行者を指定した場合
 (3)遺言執行者がいない場合に、利害関係者の請求により家庭裁判所が選任する場合

 遺言執行者に指定された場合、後述の通り、いろいろなことを行う必要があり責任も発生します。裁判所が遺言執行者を選任する場合にはあらかじめ後者の意向を確認します。指定をされた人は、必ず遺言執行者になる必要があるわけではなく、就任を拒否することもできます。その場合には、就任を拒否することを相続人に通知することになります。


         (遺言執行者が行わなければならないこと)
  前述の通り、遺言執行者は、遺言の実現に必要な一切の行為を行う権利を有し義務を負います。民法は、遺言執行者になることを承諾したときには、直ちにその任務を行わなければならないとしています(民法1007条)。そこで、就任直後に行わなければならないことを説明します。
  遺言執行者は、就任後直ちに以下の3つのことをする必要があります。

(1)遺言執行者に就任することを相続人に通知する。
(2)財産目録を遅滞なく作成し、相続人に交付する。
(3)(1)(2)の前提として、戸籍を取り寄せて誰が相続人であるかを確定する。
  就任直後に以上の手続を行い、その後は、遺言を実現する様々な行為をすることができ、義務づけられています。不動産の相続登記、預金の解約等行うことは広範に及びます。
  ですから、遺言執行者の仕事は広範に及ぶため、就任するかどうかはよく検討する必要があります。就任した場合にも、弁護士などのアドバイスを受けることをおすすめします。

【特別縁故者】

 亡くなった人に相続人がいない場合には、その人の遺産は誰が受け取ることになるのですか。「特別縁故者」が受け取ることができると聞いたことがありますが、本当でしょうか。

 亡くなった人に相続人がいない場合には、その人の財産は国が取得することになります。これは、プラスの財産のみで、その人の借金を国が引き継いで支払ってくれるわけではありません。
  ですから、相続人のいない人は、遺言書を残しておくことがひとつの方法です。
  それでは、遺言書も残されていない場合はどうでしょうか。民法958条の3は、「特別縁故者」に当たる人に対して、遺産の全部または一部が与えられるとしています。


                            (特別縁故者とは)
  民法は、以下の3つの場合に特別受益者にあたるとしています。
 (1)「被相続人と生計を同じくしていた者」
   内縁の夫、妻や、事実上の養子、養親などがその例です。
 (2)「被相続人の療養看護に努めた者」
 被相続人の生前に、被相続人の世話をした人がこれに当たします。ただ、家政婦や看護師などは、まさに、被相続人の療養看護に努めた人ではあるが、正当な報酬を得ている場合には、原則として特別縁故者には当たらないとされています。
(3)「その他被相続人と特別の縁故があった場合」
   裁判で問題となった事例をあげると、相続人ではないが親族であり、精神面、財産面などで、生前、関係、援助があった場合、「特別縁故者」にあたるとされた例があります。全く他人の場合でも、長期間にわたり師弟として関わり、被相続人の精神面、経済面に貢献しその生活の安定したような場合に、「特別縁故者」にあたるとされた例があります。


                (「特別縁故者」と認められるための手続)
(1)相続人がいないことを確認する手続

 特別縁故者の申立をする前提として、相続人がいないことを確認する必要があります。
   そのためには、特別縁故者であることを主張する人などから家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立を行います。
   次に、選任された相続財産管理人が相続人を探す手続をします。そして、相続人がいないことが確定してはじめて、特別縁故者の申立を行うことになります。

(2)特別縁故の申立
   特別縁故者にあたると考える人は、家庭裁判所に、その申立をし、裁判所がその決定をします。
   申立をするには、期限があります。相続人がいないことが確定してから3ヶ月以内に申立をする必要があります。相続人がいないことがいつ確定するかは、その手続をする相続財産管理人が知っていますので、あらかじめ、確認するとよいでしょう。

 正式な婚姻関係にある夫婦の場合は、法律上、配偶者たる相続人としての権利が保障されており、財産の全部を他に相続させる・あるいは贈与するという遺言がある場合でも遺留分の権利が保障されています。
 しかし、内縁関係にある当事者の一方が死亡した場合、他方の当事者が、死亡した当事者の財産に対してどのような権利を持つかについては、裁判上いろいろな議論があります。
 内縁関係の場合には、裁判上も、遺言がないかぎり、原則として財産の相続権は認められません。しかし内縁関係の場合でも、住宅については、相続人がいる 場合と相続人がいない場合で違ってきます。まず亡くなった夫に相続人がいない場合、借地借家法第36条において「事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあっ た同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。」としていますので、あなたは明渡しをする必要がありません。
 つぎに相続人がいる場合ですが、夫の賃借権を相続人が相続したあと、相続人から明渡しを迫られることが考えられますが、多くの裁判例で、住宅の相続人が、機械的に、住宅に困る内縁関係の他方当事者に対して明け渡しを請求するのは明渡請求権の濫用にあたるとして排斥しています。

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