相談事例

債権回収・取引先とのトラブル

【売掛金の回収と時効】

 売掛金の支払いを請求したところ、相手方から時効を主張されました。請求書はずっと送っていたのですが、やむを得ないのでしょうか。

時効には、一定期間が経過することで権利を取得する「取得時効」と逆に権利が消滅する「消滅時効」があり、本件は消滅時効に関する問題です。
債権の消滅時効は、原則10年ですが、商売上の取引の場合、原則5年とされています。更に短期の消滅時効が定められているものもありますので、ご注意してください。以下は代表的な短期消滅時効の一例です。


3年の短期消滅時効)
①医師、助産師、薬剤師の診療債権、助産又は調剤に関する債権
②工事の設計、施工管理を業とする者の工事に関する債権

 

2年の短期消滅時効)
①弁護士、公証人の職務に関する債権
②生産者、卸売商人、小売商人の売却した商品代価に関する債権

 

1年の短期消滅時効)
①運送賃に係る債権
②旅館、飲食店などの宿泊料、飲食料などの債権

相談者は請求書を送り続けてきたと言いますが、消滅時効の時計の針は、単に請求書を送り続けているだけでは止まりません。時計の針を止める事情を「時効中断事由」(民147条)といいますが、訴訟を起こしたり、差押えや債務承認(債務者による債務の弁済や承認書の作成など)などが存在する必要があります。
ご自分の債権が今にも消滅時効に係りそうである場合、とりあえず、催告書を相手方に送付し、6ヶ月以内に裁判手続をとれば、時効中断の効果を確保することが出来るでしょう。いずれにせよ、速やかに弁護士に相談されることをお薦めします。

【継続的な売買契約の一方的破棄】

 これまで、A社との間で、ある製品を継続的に売買する契約を締結し、取引を続けてきました。しかし、A社が「これからは他社から購入することにしました。」と言って、一方的に取引を打ち切ってきました。このようなことは認められるのでしょうか。

 継続的な取引を行う旨の契約がなされており、相当期間取引が継続していた場合、一方当事者が相当な予告期間をおくことなく取引の継続を拒否することは、許されない可能性があります。もっとも、こちら側に債務不履行があったり、信頼関係が壊れるような事情があったりした場合には、認められることもあります。

【取引先の倒産と動産先取特権】

 取引先が倒産してしまいました。売掛金をどうやって回収したら良いでしょうか?

 取引先が倒産してしまった場合、売掛金の回収は非常に困難です。取引先が破産した場合には、裁判所が選任する破産管財人が破産者の財産を換価し、それぞれの債権者に平等に配当してくれますが、その配当率は高くなく、配当がゼロの場合もしばしばです。

 もっとも、取引先に動産を売却し、その売掛金が未払いの場合、売却した動産から優先的に代金を回収しうるという「先取特権」があります(民法第311条、第321条)。この動産売買の先取特権は、破産手続では別除権として扱われます。また、売却した商品が第三者に転売されている場合でも、その転売代金が相手方に支払われていないときは、先取特権の「物上代位」(民法第304条)によって転売代金を差し押さえ、優先的に回収することができる場合があります。

 売却した商品について先取特権が行使できるのかや転売代金を回収できるかなどについてぜひ弁護士に相談しましょう。

【売掛金の回収と債権の立証】

   売買契約書がなく納品書と請求書しかありませんが、売掛金の回収はできますか?

   売買契約は書面でなくとも、口頭でも成立します。相手方が契約自体を否定するのか、売買金額を争うのか、納期を争うのかなど争点に応じて立証方法は異なりますので、弁護士に相談して立証方法を検討して見てください。

【売掛金の回収方法】

 取引先がいろいろ文句をつけて売掛金を支払ってくれません。回収するためには、どのような方法があるでしょうか。

 どのような文句(契約不履行など)か争いになる点によりますが、相手方に何らかの言い分があって支払を履行してくれないのですから、その理由を問い質して交渉するこのは当然のことです。
 しかし、長引くと証拠が散逸すること(メールが保存されない)もあり、訴訟を考えて交渉中の電話を録音するなど証拠づくりをすることも大切です。
   内容証明郵便によって売掛金を請求することも適切です。
   内容証明郵便といっても、それ自体で何らかの法的効力が生じるものではありませんが、遅延損害金の発生時期、解除の意思表示、消滅時効の進行を中断するための催告(民法第153条)等を立証するための証拠となります。
   相手方が契約内容に特に争いがなく、単に支払能力がないために支払えないとしている場合は、簡易裁判所に支払督促手続をとり、強制執行力のある債務名義を取得することもできます。
   支払督促は、原告の一方的な申立で形式面が整っている限り、裁判所は、その支払督促を被告に送り、送達後2週間以内に異議がでないときは、仮執行宣言の申立をすると裁判所が仮執行宣言付支払督促を被告に送り、その送達後、2週間以内に異議がでないときは、それが確定し、判決と同じ効力の書類となります。
   この間に、被告から異議がでれば、訴訟に移行し、法廷における口頭弁論が開かれることになります。

【債権を分割で回収するときの注意点】

 取引先から売掛金を分割払にして欲しいと言われました。分割払に応ずるとしても回収を確実にする方法はありますか?

 取引先が会社などの法人である場合は、代表者個人の連帯保証を求めることも重要です。また支払遅延の際に、改めて裁判を起こすことなく、すぐに強制執行できるように、合意内容を公正証書や即決和解で確認するなど債務名義を取得しておく方法もあります。

 不動産に抵当権を設定することもありますが、単に設定すれば良いというものではなく、先順位者がどの程度いるか回収可能性に注意しましょう。

【取引先の民事再生と売掛金の回収】

 取引先が民事再生手続をとりました。何か売掛金を優先的に回収する方法はありませんか。

 民事再生手続に入ると、売掛金は一般債権として扱われ、再生が認められるよう減額などの決定がなされることが多く、支払も分割にされるのが通常です。
 再生手続によらずに、優先的に回収する方法は、担保権によるほかありません。
 例えば、不動産に設定した基本約定契約の根抵当権や売掛債権譲渡担保権が設定されていれば、それを実行します。
 動産の売掛金の場合は、動産売買先取特権に基づく物上代位権の行使が考えられます、(民法第311条、第304条)。取引先が商品を転売しているような場合に取引先が転売先に対して有する売掛金債権(まだ支払われていない場合)を裁判所の債権差押命令により、差し押さえる方法によって優先的に回収します。一方的に差し押さえるので、立証方法としては資料が十分にそろっている必要があります。

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