きづがわ瓦版

ことのはぐさ

2007.12.04 弁護士 横山精一 | 子会社を解散させた親会社の責任を認める 2007年10月26日第一交通事件大阪高裁判決の報告


 1 はじめに

 2007年10月26日、大阪高等裁判所(第3民事部)において、第一交通争議の帰趨を決する完全勝利判決がありました。第一交通株式会社は、従業員約 3400名、タクシー台数6000台以上を擁する日本最大の第一交通タクシーグループの中枢会社です。第一交通は、全国のタクシー会社を買収して大きくなった会社です。買収した会社の賃金体系を変更し、賃金を低くする、その政策の障害となる労働組合を破壊するという行動をとってきました。
 そして、2001年3月30日、南海グループのタクシー会社7社を買収し、その後、労働条件の切り下げと、労働組合の破壊を行ってきました。その為、これら7社に存在した労働組合のほとんどは解散を余儀なくされ、第一交通の提案する、従来より条件の悪い「新賃金体系」が導入されてきました。

 しかし、佐野第一交通株式会社(旧佐野南海交通株式会社、以下「佐野第一」といいます)のタクシー労働者で組織する自交総連佐野南海労働組合は、この第一交通の攻撃にもかかわらず、労働組合の組織を維持し、裁判や労働委員会への申立などにより、第一交通を追い込み、ほぼ全勝の成果を上げてきました。そこで、第一交通は、佐野第一を解散し、その従業員である組合員を解雇し、労働組合と組合員を第一交通グループから排除しようとしました。
 2003年4月15日、組合員55名全員は解雇され、同年5月12日、佐野第一の株主総会(株主は第一交通1人)で、佐野第一の解散が決意されました。

 しかし、第一交通グループから排除されたのは、労働組合と組合員だけで、組合を脱退したタクシー乗務員は、第一交通のグループ会社のひとつである御影第一交通株式会社(以下「御影第一」といいます)に雇われ、従来と同じ労働条件で、働くようになりました。
 このように、佐野第一の解散とそれを理由とする組合員たちの解雇は、労働組合を排除することを目的とする偽装解散をその本質とするものでした。これに対し、労働組合と組合員は、第一交通らを相手として、裁判を行い、何度も勝利判決を重ねてきました。今回下された2007年10月26日の大阪高等裁判所判 決は、その判決の中でも、最も重要な裁判でした。佐野第一の偽装解散を理由とする組合員全員の解雇に対し、親会社である第一交通の雇用責任を追求していたもです。
 
  以下、この裁判での請求内容、裁判の争点、大阪高裁の判断等について、報告します。

 2 請求の内容

 佐野第一の解散を理由に解雇された組合員らは、親会社の第一交通に対し、主位的には、従業員としての地位の確認と賃金の支払い、違法解雇に対する慰謝料を 求め、予備的には、不法行為に基づく賃金相当損害金の支払いを求めて、本案訴訟を提起しました。同時に、単組とその上部団体の自交総連大阪地連も、親会社の第一交通に対し、不法行為に基づく非財産的損害の賠償を求めました。なお、不法行為に基づく慰謝料と非財産的損害の請求については、代表取締役2名の連 帯責任も追及しています。

 さらに、解雇された組合員らは、佐野第一の事業を継続している御影第一にも、従業員としての地位の確認と賃金の支払いを求めました。

 3 裁判の争点

 本件の最大の争点は、子会社の偽装解散を理由に解雇された労働者は、法人格否認の法理により、親会社に対し雇用責任を追及できるかというものです。

 この点、1審の大阪地裁堺支部判決は、法人格否認の法理の適用を認め、法人格濫用の事実、偽装解散の事実を認めながら、雇用責任の主体は解散会社の事業を 承継した別の子会社である御影第一であり、親会社の第一交通は不法行為責任のみを負うと判断しました。この判断に対しては、双方が控訴しました。

 4 大阪高裁の判断

 最大の争点であった雇用責任の主体について、大阪高裁は、1審判決を変更しました。高裁判決の骨子は、以下のとおりです。

① 法人格否認の法理は、親子会社における雇用契約の関係についても適用できる。
② 子会社の法人格が完全に形骸化している場合は、子会社の従業員は、直接親会社に対して、雇用契約上の権利を主張することができる。
③ 親会社が子会社を実質的・現実的に支配し(支配の要件)、不当な目的を達するため(目的の要件)、その手段として子会社を解散したなど、法人格が違法 に濫用され、その濫用の程度が顕著かつ明白である場合は、子会社の従業員は、直接親会社に対して、雇用契約上の権利を主張することができる。
④ しかし、子会社が真実解散した場合は、不当な目的であっても、子会社の従業員は、親会社に対し、継続的、包括的な雇用契約上の責任を追及することはできない(ただし、不法行為が成立する)。
⑤ これに対し、子会社が真実解散されたものではなく偽装解散である場合は、子会社の従業員は、親会社に対し、継続的、包括的な雇用契約上の責任を追及することができる。

 高裁判決は、法人格の形骸化こそ否定しましたが、親会社第一交通による子会社佐野第一の実質的・現実的支配、組合を壊滅させる違法・不当な目的を認め、かつ、偽装解散の事実を認定し、組合員らは、法人格の濫用の程度が顕著かつ明白であるとして、親会社の第一交通に対し、佐野第一の解散後も継続的、包括的な 雇用契約上の責任を追求することができるとしました。

 また、高裁判決は、解雇された組合員らについて、一人あたり60万円の慰謝料を認め、佐野南海労働組合に200万円、上部団体である自交総連大阪地連に 100万円の非財産的損害を認めました。慰謝料と非財産的損害については、2名の代表取締役の連帯責任も認めています。この点は、1審判決を維持していま す。

 5 まとめ  

 高裁判決は、原判決と異なり、雇用責任の主体は親会社の第一交通であるとしている点で重要です。仮処分手続きや原判決では、この判断が二転三転しましたが、ようやく当初の組合側の主張のとおり、親会社である第一交通の雇用責任が認められました。子会社の法人格を濫用して偽装解散を企てた張本人というべき 親会社の雇用責任を認めたものです。子会社御影第一の資力は限定的ですから、この意味でも大きな意義があります。1審判決を大きく上回る完全勝利判決と評価する所以です。もちろん、組合員の意気も上がっています。

 高裁判決を受けて、第一交通側は、上告をしました。舞台は、最高裁に移るわけですが、法定闘争としてはこれが最終最後になりそうです。当事務所での弁護団参加弁護士は、小林保夫弁護士と横山です。


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