2026.10.20
弁護士 井上洋子
住居の敷地や建物について賃料の増額を求められたとき
最近、賃料増額請求事件が増えているように感じます。
賃料は貸主と借主の合意で決まるものです。家主さんや地主さんから賃料を値上げします、と言われても、それをそのまま受け入れる必要はありません。まず、貸主と借主とで話し合いをしてください。

話し合いがうまくいかないときは、お住まいの地域の簡易裁判所で調停をすることになります。法律の規定で、賃料増額についてはいきなり裁判をすることができず、必ず調停をすることが求められているからです。調停は裁判所で行う話し合いです。
調停で参考として考慮されるものは大きく以下の3点です。
・いつから今の家賃で、現在まで何年経っているか。
・今の家賃になってから、物価や税金や地価の価格はどのように変動してきたか。
・今、新たに同じような物件を借り入れるとしたら家賃はいくらくらいか。
事案によってさまざまな事情がありますので、この3つ以外の事情も検討されます。調停でも話がつかないときに、裁判となり、裁判で賃料が決まります。
では、調停や裁判などでどのくらいの賃上げが定まっているか、という結論ですが、あくまで私の経験と感覚からの大まかなものですが、最大でも30パーセントアップまで、多くは5パーセントから20パーセントアップという感じです。地価や不動産関連の税金が上がったからといって住んでいる人の収入が連動して上がるとは限らないですし、生活の安定を考えると大幅な増額は非現実的だからです。(ちなみに、これは値上げが合理的だと認められる場合のことです。事案によっては、値上げが全く否定されたり、逆に借主が賃料減額請求手続き(まず調停、次に裁判という順序なのは同じです。)を申し立てて減額が相当と認められることもあります。)
ですので、借主の方々は、値上げの話があっても、地主・家主の求める額が合理的かどうか、一度立ち止まって考えてみてください。また、不動産価格の高騰にともない、投資物件あるいは収益物件として不動産を購入し、その不動産の借主に対して賃料値上げを求めるという地主・家主の立場の方も、ご自身が思うように自由に値上げできるわけではない、ということを理解された上で、あらかじめ物件購入後の経済収支を試算しておくことをおすすめします。
