相談事例

取引・契約をめぐる問題

 公正証書とは当事者の意思表示や当事者間の合意内容などを明確にするために作成する公文書で、公証人という一定の資格をもった公務員が作成する書類になります。遺言公正証書や離婚に伴う公正証書、任意後見契約公正証書、金銭や不動産貸借に関する公正証書など様々な種類があります。
 このうち金銭の貸し借りについて公正証書を作った場合ですが、貸したお金を返してくれない相手の財産を差押さえしたい場合、通常は裁判を起こして判決などをとることが必要になります。裁判となれば、相手方に裁判所から訴状が郵送されますし、その分、相手方に差押えを避けるための順備の機会を与えることになります。しかし、約束内容を公正証書にしておけば、裁判所の判決を得なくても、直ちに差押えなどの執行手続に入ることができます。貸金に限らず、慰謝料、養育費など、金銭の支払いを内容とする契約であれば、同様の効果があります。
 また、遺言をする場合、一番簡単なのは、自分で遺言全部と日付を書いた上、署名押印すればいいのですが、内容が曖昧であったため争いが起こったり、隠されたりする危険があります。しかし、遺言を公正証書にしておけば、法律の知識を持った公証人が作成に関わりますので、遺言を残した人の意思が実現できないという事態をさけることができますし、原本が公証人役場に保管されているため紛失してしまっても復元してもらえるなど安心です。その上、亡くなられた後、「検認」といって遺言書を家庭裁判所に提出して内容を確認してもらう手続の煩わしさも回避することができます。
 法律上、会社と経営者とは別人格として扱われるので、会社が倒産しても、その債務について経営者は責任を負わないというのが原則です。
 ただし、経営者が会社の保証人となっている場合には、保証人としての支払責任を負うことになります。
 
 会社と大きな取引を始めるときや支払が遅延したときには、会社が倒産してしまっても経営者から貸付金、商品代金などを支払ってもらえるように、経営者に会社の保証人になるよう求めておくことをお勧めします。
 また、株式会社において、経営者の業務執行に重大な過ちがあり、それによって倒産した場合には、経営者は、損害を受けた者に対して、損害賠償の責任を負うことがあります。(取締役の第三者責任)

 「消滅時効」とは、債権者が一定期間、権利行使しなかった場合、債務者が時効を主張すると権利が消滅してしまうという制度です。時効期間の定めは法律上いくつも種類がありますが、一般に事業者による取引の場合、債権は5年で消滅時効にかかります。
 他方で、時効期間の進行を止める制度として「時効の完成猶予」「時効更新」というものがあり、民法上①「請求」、②「差押え、仮差押え又は仮処分」があれば時効の完成が猶予され、手続で債権が認められた場合は、その後から新たな時効が進行します(更新)。

 ③「承認」(法147条)がある場合、時効は更新され、時効期間をカウントする時計の針がゼロから動き始めることになります。


 注意して頂きたいのは、①の「請求」とは、裁判を起こすことを意味し、裁判外で何度請求書を送っていても、それだけでは時効の更新の効力は生じないということです(一時的な時効の更新猶予の効果はあります)。5年以下の短期消滅時効にかかる債権もありますので、回収に問題が生じたときは早めに専門家に相談されることをおすすめします。

【代金等の回収方法】

 取引で生じた代金を、相手方が支払ってくれません。どのようにして回収すれば良いのでしょうか。

 まず、内容証明郵便によって請求する方法が考えられます。請求について証拠に残りますし、相手方に対する心理的効果もあります。ただし、この方法では、支払いを法的に強制することはできません。
 法的強制力を得るためには、訴訟等の手続を要します。簡易な方法としては、支払督促があり、相手方に裁判所からの通知が届いてから2週間以内に異議を述べられなければ、判決を得たのと同様に強制執行もできるようになります。
 また、調停や少額訴訟といった手続もあります。

【友人にお金を貸す際の契約書に書くべき内容】

 友人に頼まれてお金を貸すのですが、契約書(借用書)にはどのようなことを書くべきですか。

 貸した金額、貸した日付、返済期限、返済方法などを書きましょう。その際、お金(貸金)を現実に渡したことを明記しておきましょう。
 なお、貸したお金に利息を付ける場合には、利率についても記載する必要があります。利息について合意がなければ、利息を請求することはできません。ただし、利率には上限がありますので(利息制限法1条)、注意が必要です。
 そして、貸主と借主双方の署名・押印をしておきましょう。
 契約書は1通でも有効ですが、同じ内容のものを2通作成して、双方が1通ずつ持っておくのが良いでしょう。2通あれば、双方が契約内容を知っておくことができますし、後から無断で書き換えられるのを抑止できます。

【請負代金が支払われない場合の仮差押え】

 下請けで工事をしたのですが、私(C)に元請け(B)が代金を払ってくれません。注文主(A)に直接請求できるでしょうか。

 注文主(A)→元請け(B)→下請け(C)

 注文主(A)との間には直接の契約がありませんので、請求はできません。ただ、注文主(A)が元請け(B)にまだ代金を支払っていない場合、元請け(B)が注文主(A)に対して持つ債権を差押えることが考えられます。ただ、差押えをするには確定判決や和解調書などを獲得しておく必要がありますので、一定時間が掛かります。その間に注文主(A)から元請け(B)へ支払われてしまっては困りますので、事前に元請け(B)の注文主(A)に対する債権を仮差押えしておくことも検討されるべきでしょう。

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