2026.01.05
弁護士 峯田和子
改正家族法~法定養育費と先取特権の行方~
改正家族法の施行日が令和8年4月1日となった。共同親権の導入が大きく取り沙汰されているが、併せて注目を集めたものに法定養育費制度と養育費の先取特権がある。以前にも同制度について文章を書き、どのようなものになるのか議論の行方を注視してきたが、概ね、以下のようなものになりそうだ。
1 法定養育費制度
まず、法定養育費(要するに、当事者間の合意がなくても請求しうる養育費)は、令和8年4月1日以降の離婚にしか適用されない。同日以前に離婚しているケースで、調停や訴訟などで養育費の合意はしたが、支払を受けられないでいるからといって、法定養育費制度が救世主になるわけではない。
また、法定養育費制度は、国が義務者の代わりに立替払してくれるわけではなく、あくまでも権利者が義務者に請求し、且つ、支払がない場合、その資産・収入から回収しなければならない。海外では、国が立替払をして義務者に対して税金と同様に取り立てる、支払可能なのに支払がない場合に運転免許等の資格更新などで不利益を課すといった例もある中、肩透かしという印象である。
現在、法定養育費の金額としては子一人あたり月2万円をベースに議論されている。とりあえず、令和8年4月1日以降の離婚であれば、当事者間に合意がなくても子一人あたり月2万円の請求権が認められるということだ。しかし、養育費は、通常、標準算定方式(裁判所基準)で計算されるところ、当事者双方の収入によっては、子一人あたり月2万円を下回ることもある。それなら、権利者としては、標準算定方式(裁判所基準)で養育費を合意するより、法定養育費の方が得ではないか、と思うかも知れない。しかし、義務者としては月2万円を下回る旨の主張をすることになるであろうし、その場合は、法定養育費としても月2万円を下回る金額の範囲でしか認められない。そもそも義務者に収入がなく、支払能力が無い事案の場合、免除もありうる。法定養育費制度が導入されたからといって、本来認められる金額(裁判所基準)を超える権利までは認められない。そうは問屋がおろさないということだ。
しかし、通常、裁判所は養育費を請求した時(調停であれば、一般的には調停申立時)からしか認めない運用であるが、法定養育費制度の導入により、令和8年4月1日以降の離婚の場合、請求前(調停申立前)についても、法定養育費の額の範囲では請求することができる様になる。
2 養育費の先取特権
更に、養育費について先取特権が認められた。現在、子一人あたり8万円の範囲で検討されている。養育費については、
①そもそも養育費に関する合意がない場合(法定養育費)
②合意はあるけれど差押えのできる債務名義の形式(判決や調書、審判、公正証書)になっていない場合
③合意があり、且つ債務名義の形式である場合
が考えられる。養育費の先取特権が意味をなすのは、①②の場合である。先取特権が認められているので、例えば子一人あたり月10万円の養育費を認める私的な合意書がある場合、少なくとも子一人あたり月8万円の範囲では差押えができることになる。
また、民事執行法だけでなく家事事件手続法上も情報開示命令を求められるようになるので、養育費算定に必要な情報を隠す義務者に対して一定の効果は期待できるのかも知れない。改正家族法の運用に関しては、まだまだ詰められていない部分もあるようであり、今後の運用を注視していきたい。

