ことのはぐさ

2025.12.22 弁護士 島袋博之|フリーランス新法が施行されて1年が経ちました


 働き方が多様化し、最近では、会社に雇用されずに独立して、自分のスキル・知識を活かして仕事を行う人々(フリーランス)が増えています。具体的には、デザイナー、ライター、コンサルタントなどの専門スキルを持つ個人事業主や、配送・デリバリーなどのサービスを委託を受けて行う事業者などです。フリーランスは、雇用契約ではなく、業務委託契約や請負契約などを締結し、仕事を受注し、報酬を得る働き方です。

 

 フリーランスで働く人々は、会社に所属して働く会社員とは異なり、発注者から不当な契約内容を押し付けられたり、労働時間規制がないために長時間働かされたり、報酬の支払いを遅れるなど、不利益を受けやすい立場にあります。そこで、フリーランスの保護のために、取引の適正化・就業環境の整備を目的として、2024年11月1日にフリーランス新法(正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)が施行されました。フリーランス新法は、発注事業者に対して、報酬の支払い期日などの取引条件を明示すること、不当な発注取消しや減額を禁止すること、ハラスメント対策の実施、育児介護等へ配慮を行うことなど規定しており、違反した発注事業者には、指導・勧告・命令等の処分がなされることになりました。

 

 フリーランス新法が施行されて1年、公正取引委員会や厚生労働省はフリーランス新法の解説サイトを新設するなどして積極的に周知・広報活動を行っています。

 (フリーランス・事業者間取引適正化等法施行から1年を迎えました!|厚生労働省

 (2025年公正取引委員会フリーランス法特設サイト | 公正取引委員会

 

 また、公正取引員会は、令和7年、報酬額や支払期日を明示しなかった大手出版社など5社に対し指導・勧告処分を行いました。フリーランス新法に基づいた社内システムの整備は徐々に定着しつつあります。

 しかし、一方では、実態は労働者であるのに、不当に個人事業者として働かされるケース(いわゆる「名ばかりフリーランス」)では、フリーランス新法では十分な対応ができないという問題があります。また、国内には多種多様な事業者が多数存在するなかで、フリーランス新法が違反事例に迅速・適切に対応できるのかといった問題があり、今後の運用において重要な点となっています。引き続き、フリーランス新法の周知がなされ、社会に浸透し、適正な取引社会の実現に向かう必要があります。


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