ことのはぐさ

2025.12.03 弁護士 宮本亜紀|ちまたで話題のスパイ防止法案って


 今、国会ではスパイ防止法案が取り沙汰されています。高市首相は自民党総裁選でスパイ防止法制定を公約していましたし、自民党と日本維新の会の連立政権では、2026年前半に内閣調査室を国家情報局に格上げし、2027年度末までに情報要員(インテリジェンス・オフィサー)養成機関を創設するなどが合意されています。国民民主党は法案を準備し、参政党は法案を早くも単独提出しました。既に特定秘密保護法により特定秘密などを漏えいした場合には罰則がありますが、さらに重罰化することなどが盛り込まれています。

 

 ジェームス・ボンドやロイド・フォージャーなど、古今東西、スパイはカッコ良く描かれていますが、そこには戦争を準備する国家同士の探り合いがあります。双方が「相手国が狙うから防衛しなければ自国が危険」「自国=正義、相手国=悪」と全く同じように考えているわけです。それはつまり、立場が変われば正義も逆転するようなあやふやなものなのです。世界大戦を二度経験して、核戦争直前の危機を何度も経験して、国際社会は自国の利益のみを追求し他国を無視してはならない、国際協調の努力をしてきました。気候変動問題など地球規模で解決しなければ人類が生きていけない現代では、国際協調は最も切実です。

 

 また、国家や国家的組織の間では、今でも、ウクライナやガザで戦闘行為で多くの人々が死傷していて、一度始めた戦争が簡単には終われない状況は大変憂うことですが、国家間で緊張が生じても、今やリアルやオンラインで広く自由に個人が国境を越えて交流でき、同じ人間同士で通じ合えると実感して、個人や市民団体レベルで信頼関係を築いていけています。その交流を止め分断するような国家政策は取るべきではありません。

 

 特に日本は、アジア・太平洋戦争の悲惨な体験を元に、軍隊を持たず交戦権を認めない、戦争放棄した憲法を持つ平和国家として80年歩んできました。平和は何もしないで保たれるものでなく、国家の利害衝突や文化の軋轢から緊張関係が生じても、武力衝突や戦争に発展しないために外交での解決を図り、国際平和、全世界の人々が平和のうちに生きられることをめざしてきました。私は、それを覆して今、公然とスパイ活動を取り締まり、また自らスパイ活動を行うことで、「敵国」を作って戦争準備する国になることを、私は強く拒否します。


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