きづがわ友の会

友の会活動報告

2019年掲載分

きづがわ塾課外授業 法廷傍聴

裁判員裁判をはじめ刑事裁判のことを新聞やテレビのニュースでよく目にします。

しかし、「裁判員裁判って、どのようにやっているのだろうか。」「テレビでみる法廷と同じなのかな。」「一度、傍聴してみたい」と関心をお持ちの方もおられるでしょう。

そこで、これまで6回実施し、ご好評いただきました「法廷傍聴」を今年も企画しました。

※当日に裁判員裁判がない場合でも、通常の裁判官による刑事裁判法廷をご案内し、解説させていただきます。

※大阪地方裁判所では、ナイフ等の持込みがされないよう裁判所建物への入場に際し、空港と同様のX宣検査を実施しておりますので、ご注意ください。

 

*****ご報告*****

 

罪名は強盗殺人事件

2019年3月4日、恒例の裁判傍聴企画を実施しました。9名の参加がありました。

事前に大阪地裁のホームページで日程を公表されている裁判員裁判(強盗殺人、有印私文書偽造、行使、詐欺)の日程を知りましたので、初回公判をあらかじめ私が傍聴して、公訴事実、冒頭陳述を聞いて争点を把握しておきました。30代の女性が、知り合いの女性になりすましてパスポートを取得するため、その知り合いをナイフで多数回、刺して殺害し、盗んだクレジットカードなどを使用したという公訴事実でした。

争点は責任能力(多重人格)

当日は、第5回の公判で、心神耗弱か完全責任能力かという争点である責任能力に関して、鑑定人である精神科医の「解離性同一性障害」(多重人格の交代)との鑑定結果に関する尋問でした。

午前中に、鑑定人医師からの鑑定書の説明があったので、私が傍聴して概要をつかみ、午後の参加者の傍聴前の事前説明で問題点を参加者にお話しておきました。午後に参加者のみなさんで傍聴したのは、鑑定人に対する検察官、弁護人、裁判員からの質問でした。

解離性同一性障害は、通常は、主人格は、別人格と「記憶の共有」はない(何も覚えていない)そうなのですが、この事件では、殺害時の状況について「私に似た人が1回刺しているのを(自分が)上から見下ろしていた」とする被告人供述に見られるように、おとなしい「主人格」と大胆で冷酷な「別人格」が存在し、別人格により犯行が敢行されたが、主人格は、そのとき、犯行を押しとどめることはできなかったが、「記憶は共有」していたということでした。

ただ、主人格のコントロールがきかない別人格による犯行であれば、責任能力が減退するという考え方自体を市民である裁判員にわかってもらうのは、なかなかたいへんなことだと思いました。

求刑どおりの無期懲役

この事件は、その後の公判の最終意見陳述では被告人が「悪いことをしたと思っていない。この場にいる意味がない」と述べたようで、裁判に被害者参加している被害者遺族は極刑を求め、検察官は無期懲役を求刑しました。

3月14日に言い渡された判決は、「被害者になりすます目的のために、合理的な行動をしていて、犯行当時、善悪を判断していた」などと、被告人の責任能力を認め、求刑と同じ無期懲役を言い渡しました。

精神的な病気のために、自己の行動を制御する精神的な能力が衰えているときは、その刑事責任は減じられるという刑法の「行為責任の原則」自体を市民に理解してもらうことは容易ではないと感じていたので、ましてや鑑定医が指摘しる多重人格による別人格の合理的行動による犯行について、その責任能力を判断するというのは、普段そのような事象を考えたことがない市民にはきわめて困難ではないか、裁判員裁判の対象事件について除外事由や選択制などを設ける必要性はないかと改めて考えた事件でした。

 

弁護士 岩田研二郞


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