ことのはぐさ

2017.12.13 弁護士 古本剛之|解決事例 「未払い残業代の回収」


 ある4人の労働者の未払い残業代請求の事件です。
 4人の方は駅ビルにテナントとして入っている店舗で働いていました。ここでは、タイムカードは打つものの、残業代は一切払われていませんでした。4人は訳あって退職することになり、その後、未払いの残業代を会社に請求しました。
 会社側は、この請求に対し、「給料に残業代が含まれている」と反論しました。しかし、そもそも就業時には契約書も作成しておらず、給料が残業代込みであることの説明もありませんでした(会社側は、口頭で説明したと主張しましたが、証拠はありません)。

 

 残業代を定額にして基本給に加えた額を給料として支払う制度はありますが、そのためには、その旨を労働者に明確に示して承諾を取る(契約書に明記する等)必要がある上、基本給額と残業代額が区別でき、残業代額を計算できるようにしておかなければなりません。なぜならば、このような定額残業代の場合でも、実際の残業時間を基準にした残業代が定額残業代を超えた場合には、超えた部分の残業代が払われなければなりませんので、その計算ができるようにしておく必要があるのです。しかし、この会社はそのようなことはしていませんでした。

 

 訴訟において主張を繰り返すうちに、裁判所も労働者側の主張が正しいという心証を持つようになり、労働者側の主張をほぼ認める内容で和解が成立しました。
 残業代は2年で時効にかかるため、直近2年分しか請求できないのですが、4人併せると1000万円ほどの金額になりました。

 

 ところが、和解後に会社の業績が悪化し、会社は和解金を支払いませんでした。会社側は倒産するかもしれないと言い出しました。法的に破産をしてしまうと、回収はほぼ望めません。
 裁判上の和解が成立していますので、強制執行(財産などへの差し押さえ)ができます。会社の預金などについてはわかりませんでしたが、この店は駅ビルのテナントでしたので、そこでの精算方法に目を付けました。この駅ビルでは、テナントの売り上げを全て、一旦駅ビルの運営会社が回収し、賃料やマージンを回収した後に各店舗の取り分を渡すという精算方法をとっていました。そうなると、各店舗は駅ビル会社に対して、精算金を請求する債権を持っていることになり、これは財産になります。これを差し押さえることで、駅ビルから労働者に直接支払ってもらうことができ、全額回収することができました。

 

【プライバシー保護のため、実際の事案を一部変えてあります】


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