交通事故の損害賠償請求権も、時効にかかります。
交通事故による損害賠償請求権は、被害者(死亡事故の場合は相続人)が「損害及び加害者を知った時」を起算点として5年間(2017(平成29)年3月31日以前に発生した交通事故については3年間になる場合があります)行使しないときは時効によって消滅します(民法724条前段、自賠法4条)。
問題になるのは、いつから5年(3年)を数えるかということですが(起算日)、傷害による損害(治療費、休業損害、入院慰謝料など)は事故日から、後遺障害による損害は症状固定日からと理解しておけばいいでしょう。
時効の進行を止める方法もあります。
民法に定められた事由があれば、消滅時効は「完成猶予」「更新」されます。
交通事による故損害賠償請求権で主に問題となる「完成猶予」「更新」事由には「請求」「債務の承認」があります。
「請求」とは、裁判上の請求、すなわち、法的手続により請求することです。訴訟(裁判)の提起が代表的なもので、裁判所に訴状を提出した日に時効の完成が猶予されます。裁判において勝訴判決や和解がなされれば、時効が更新され、そこから新たな時効が進行します。
法的手続をとらずに、裁判外で請求することは「催告」といいます。この場合、相手方のもとに請求書が届いた日に時効の完成が猶予されますが、催告をしてから6ヶ月以内に裁判などの法的手続をとらないと時効の完成猶予の効果は維持されません。
「債務の承認」とは、被害者に損害賠償請求権があることを、加害者が認める行為です。「債務の承認」によって時効が更新されます。
口頭で認めることも「債務の承認」と言えます。加害者の任意保険会社からの支払は、債務の承認にあたりますが、自賠責保険への被害者請求をしても、債務の承認には当たりません。