ことのはぐさ

2023.02.13 弁護士 青木佳史|成年後見制度の改正の動きが本格化しています


 成年後見制度は、介護保険導入と同じ2000年(平成12年)に、民法を改正して始まりました。それから22年、認知症や知的障害や精神障害のある方の判断能力を支援するため、代理権等を行使する制度として活用されてきました。虐待対応や消費者被害からの保護、身寄りのない方や親族間でトラブルへの本人の権利擁護をはかる手段として、着実に役割を果たしてきました。当事務所でも、多くの弁護士が成年後見人や保佐人に選任され、あるいはホームローヤーとして任意後見契約を結んで活動をしてきました。

 とはいえ、現在の利用者は全国で25万人程度、新規申立は年間3万人あまりであり、必要な人に届いているとはいえない面もあります。一方で、後見人等は一旦選任されると原則終わりがなく、柔軟に交代もできないことや、本人の権利制限も大きく、必要であった問題が解決した後もずっと就いたままで第三者の場合には報酬負担が続くため、成年後見制度への不満や利用を躊躇する課題が蓄積してきました。

 「成年後見制度利用促進法」が定められた平成28年からは、利用促進基本計画が定められ、厚労省の下で専門家会議での検討が重ねられてきました。私も昨年から専門家会議の委員となり議論に参加してきました。この5年間に、財産管理だけでなく身上保護や意思決定支援の充実をはかることや、地域の格差なく必要な人が利用できるように権利擁護の地域連携ネットワーク作りが中核機関を設置して進められようとしてきました。

 6年目となる4月からは「第二期基本計画」が定められ、さらに地域共生社会の実現における権利擁護の重要な手段として展開するとともに、運用改善だけでは困難な課題について、成年後見制度そのものの見直しを行うこととなりました。具体的には、「本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべき(必要性・補充性の考慮)、三類型を一元化すべき、終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべき、本人が必要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人等を円滑に交代できるようにすべき」という方向性が示されています。今年9月には、日本の障害者権利条約の履行状況について審査した国連の障害者権利委員会から出された「総括所見」においても、日本の成年後見制度の行為能力制限や代理・代行制度の廃止を求める勧告が出されたところです。

 こうしたことを踏まえ、法務省は、今年6月から商事法務研究会において「成年後見制度の在り方に関する研究会」を発足させ、民法改正に向けた本格的検討を開始しました。私は日弁連推薦の委員として、その研究会委員となり、抜本的な制度見直しに向けた提案をしています。法務省は、2027年には制度改正予定と国連で表明しており、今後どのような制度改正をするのか国民的な議論となりますので、注目していただきたいと思います。


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