ことのはぐさ

2023.07.31 弁護士 島袋博之|損保代理店手数料ポイント制度について、公取申告を行いました


 大手の中古車販売業者について、損害保険金不正請求が問題となり、連日報道されています。報道ではノルマの問題も取り沙汰されておりますが、これに近い問題として、損害保険会社の「損保代理店手数料ポイント制度」というものがあります。私も弁護団の一員として取り組んでおりますが、2023年7月21日、この制度が独禁法上の優越的な地位の濫用にあたるとして公正取引委員会に申告を行いましたので、ご紹介いたします。

 

1 損保代理店手数料ポイント制度とは?

 保険代理店とは、保険会社から委託を受けて、保険商品を顧客に紹介して媒介するなど、保険会社の事業を代理して行っている業者です。現在の損害保険契約の約9割は、保険代理店が取り扱っており、皆様の損害保険契約の多くも、保険代理店を通じて契約されていると思われます。

 保険代理店が取り扱っている保険商品の金額に、保険商品ごとに設定された手数料率をかけた分が、代理店の報酬となります。たとえば、10万円の保険の契約が締結された場合は、そのうちの2割である2万円が、保険代理店の報酬となります。以前は、このようにして報酬が決められていました。

 しかし、2003年頃から、各保険会社で「手数料ポイント制度」が導入されます。これは、代理店の報酬について、各代理店の働きに応じて評価された、ポイント数をかけて計算するというものです。具体的には、10万円の保険の契約が締結された場合、従来であれば、そのうちの2割である2万円が報酬となりますが、この2万円にポイントをかけるという計算が必要になります。代理店のポイントが100であれば、2万円×100%=2万円、ポイントが90なら、2万円×90%=1万8000円、ということになります。

 

2 ポイント制度の問題点

 この説明だけなら、「ポイントを100ポイント以上獲得できれば、報酬が増える」ことになります。しかし、このポイント制によって100ポイント以上を得ることは非常に困難であり、多くの代理店が苦しんでいるのです。ポイント制の問題は、主に、以下の4つです。

  • 保険会社が一方的にポイント評価項目を設定していること
  • 代理店の売上規模が大きく・増収率が高くないと、ポイントが高くならないこと。
  • 中小代理店がポイントを獲得できないような評価項目があること
  • ポイント数や評価項目が保険会社によって毎年変更されてしまうこと

 このような制度となっているため、多くの小規模代理店は、100ポイントを得ることができず、従来よりも少ない報酬となってしまいました。ある保険代理店は、平成27年から売上を約2400万円も伸ばしたにもかかわらず、ポイントは25ポイントも減ってしまいました。当然、100ポイントにも届いていません。代理店が経営努力して保険契約数を増加させても、ポイントが減らされてしまうようになっているのです。代理店が売上を伸ばした分、保険会社は収益を増加させているのにもかかわらず、です。そのため、多くの中小代理店は、合併して大規模化を図るか、事業をやめざるを得なくなりました。

 

3 今後に向けて

 今回の申告では、関西を中心に、全国各地から264名もの申告者が集まりました。この問題が全国規模であり、代理店の方々の関心の高さが伺えます。

 不正を働く大手企業に保険金が使われる一方、顧客のために汗をかき、丁寧な対応をする代理店が損をするような仕組みは、変えねばなりません。顧客本位の損害保険制度の実現のため、引き続き、この問題に取り組んで参ります。


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