2022年6月に刑法の一部改正がなされ、2025年6月1日から施行されました。その内容を2回に分けて説明します。今回は「拘禁刑」の創設です。
1 改正前の制度
(1)刑事事件で有罪判決を受けた場合、「実刑」と呼ばれる刑罰には「懲役」と「禁錮」の2つがありました。
「懲役」は、所定の作業を行わせることが法で定められていましたが(作業に従事する義務がある。)、「禁錮」は、作業に従事する義務はなく、本人の申出がある場合に作業を行わせていました。
(2)そのため、「懲役」の場合、作業に時間をとられて改善更生や社会復帰に必要な指導等を行う時間を確保することが困難な場合がある一方、「禁錮」の場合、改善更生や社会復帰のために有用な作業であっても、本人が希望しない限り行わせることができないという問題点が指摘されていました。
今回の改正は、そのような問題点を解決する趣旨でなされたものです。
2 改正後の制度
(1)上記2つの刑罰を廃止し、新しい刑として「拘禁刑」に一本化し、改善更生を図るために、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができるとされました。
(2)想定されているのは、受刑者の特性に応じて、作業と指導を柔軟かつ適切に組み合わせた処遇を行い、改善更生や社会復帰につなげていくことです。
従来、出所しても、円滑な社会復帰ができず、再犯に及んでしまう場合がありましたが、そのような事態をできる限り防止するために、新しい刑罰及び処遇がその目的を達成していくことが期待されます。
(3)なお、新たに創設された「拘禁刑」が適用されるのは、2025年6月1日以降の犯罪行為となります。