きづがわ瓦版

ことのはぐさ

2017.02.22 弁護士 小林保夫|借家の明渡と正当事由-旧借地法・旧借家法の場合と借地借家法の場合-


1 定期借家権の場合は別として、通常の借家賃貸借契約の場合は、家主側が契約解除ないし更新拒絶をしても、当然に解除ないし更新拒絶が認められるわけではなく、「正当の事由」の存在が要求されます。
  借家や借地をめぐる法律には、借地借家法とそれぞれ独立の旧借地法、旧借家法があり、さしあたり借家についていえば、借地借家法と借家法では、「正当の事由」の定義が異なります。
  まず、借家法第1条の2は、
   「建物の賃貸人は自ら使用することを必要とする場合其の他正当の事由ある場合に非ざれば賃貸借の更新を拒み又は解約の申入を為すこと得ず」
 と定めて、賃貸借の更新拒絶や解約の要件をきわめて厳格に縛っています。借家人の保護という法制定の趣旨を踏まえたもので、現在の裁判例でもこの趣旨を踏まえた解釈が行われています。
  これに対して、借地借家法第28条は、
  「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が、建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」
 と定めています。
  借地借家法の規定は、規制緩和を求める業界の要望を踏まえて、借家法の規定を大幅に緩和し、「自ら使用することを必要とする場合」という要件を削除したほか、売却、解体など賃貸人の事業上の意図に出た更新拒絶や解約も認めるのです。したがって、残念ながら、借地借家法は、借家人・借地人保護という要請が大幅に後退したものとなっていると言わざるを得ません。
2 ただし、借地借家法は、経過措置として、同法の施行前に「借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。」と規定していますので、借地借家法の施行された平成3年10月4日以前に締結された借地や借家の賃貸借契約の更新拒絶や解約については、引き続き従来の借地法や借家法の規定による「正当の事由」の要件を備えることが求められます。
  平成3年以前に締結された土地建物の賃貸借契約といえば、大阪などの都会地でもさきの大戦で戦災による焼失を免れた建物も多く残っていることから、現在でも相当多くの借地や借家契約が旧借地法や旧借家法の適用を受けることになるでしょう。
3 他方で、平成3年10月4日以降に締結された賃貸借契約には、借地借家法が適用されますが、売却や解体など事業上の意図による解約、更新拒絶の申出であったとしても、「賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情」や、立退き料の提案などとの総合考慮によって「正当の事由」があるかどうかを判断します。
    私たちとしては、基本的には旧借地法や旧借家法における「正当の事由」についての理解を基本として対応することが求められると考えます。
  したがって、家主の提示する立退料などの提案内容によっては、家主について居住の必要がない場合でも「正当の事由」が認められる可能性はありますが、賃借人としては、家主の明渡請求に対して、強く賃借人の居住・使用の必要を主張し、その代償としての立退料の増額を求めるなど、納得のいく解決を図りたいものです。
4  私は、一棟4戸の賃貸建物のうち空き屋の1戸を除く3戸について、家主から別々の明渡請求訴訟が起こされ、賃借人3戸についてそれぞれ別の代理人がつき同じ裁判官のもとで審理された事案において、その1戸の賃借人の代理人に就いて争った経験があります。家主側は、さきの借地借家法における「正当の事由」の規定に基づき、自らの居住の必要ではなく、敷地部分の売却あるいは事業用の施設の建築という目的をあげ、立退料の提示を行いました。
  私は、旧借家法が適用される事案であることから、旧借家法の「正当の事由」に定める「自ら使用することを必要とする場合」にあたることを強く主張し対抗しました。私の依頼者の居住の必要はほぼ永続的ですから、当然ながら家主の敷地部分を一体として早急な明渡を得たいという目的の実現には重大な妨げになります。
  他の2戸の代理人は、旧借家法の「正当の事由」の存在を主張せず、もっぱら立退料の金額を争い、その増額を求めたようです。

  その結果、他の2戸については、それぞれ200万円前後という立退料による裁判上の和解による解決を余儀なくされたようですが、私の依頼者の場合は、1000万円という金額での和解をかちとることができました。
  和解の金額の多寡は別として、旧借家法の「正当の事由」の主張の意味を理解していただける事例であると考えます。


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