きづがわ瓦版

ことのはぐさ

2017.12.13 弁護士 峯田和子|解決事例 「住所を隠して離婚したい」


 その人はとても怖がっていました。長年夫から暴言・暴力を受けてきて、警察を通じて保護されたのですが、「離婚をしたい」と夫に申し出ること自体、夫の反応を想像すると不安で居ても立っても居られないというのです。彼女にしてみれば、保護された後とはいえ、夫に接触すること自体、恐怖の再来となるようです。
 
 しかし、この夫と全く接点を持たずに離婚することはできません。では、どうやって彼女の安全を確保しつつ離婚するか、です。私は、DV事案の場合、事件が解決して落ち着かれるまでは、住民票を移動させないで欲しいとお願いしています。しかし、彼女の場合、閲覧制限措置は掛けていましたが、私のところに相談に来られる前に住民票を移動してしまっていました。
 まず、離婚をするには先に調停という手続を経る必要があるのですが、私は彼女に調停を起こしても、夫と同席するのではなく、夫と別室に居て調停委員が夫の部屋と彼女の部屋を行き来することで話し合いを進めること、調停申立書には彼女の住所を書く欄があるけれど、秘匿することも可能であること、裁判所からの呼び出し時間も夫と彼女では異なるし、不安であれば弁護士と一緒に裁判所に行くということもできることを説明しました。
 
 このようにして調停が始まりました。調停申立書は夫に郵送されましたが、彼女の住民票は表示せず、旧住所を載せておきました。夫は裁判所に出頭し、何度か調停の日が設定されたのですが、離婚の条件が折り合わず、合意は成立しませんでした。
 そこで、私と彼女は、離婚の訴訟を起こすことにしました。訴訟になると、代理人弁護士がついている場合、彼女自身は証拠調べをするとき以外、原則出頭の必要がありません。ただ、訴訟をする場合も、裁判所を通じて訴状を夫に郵送しなければなりません。そこで、私はこの訴状にも彼女の本籍地こそ記載しましたが、住所は「秘匿」とのみ書いて提出しました。
 それでも、訴状は無事夫に郵送され、第一回目の裁判が開かれたのです。ところが、夫は第一回目こそ出頭したものの、その後は全く呼び出しに応じなくなりました。そこで、私達は、保護シェルターで撮影した暴行後のアザの写真や彼女の陳述書を証拠として提出し、彼女は裁判所の職員や私以外誰も居ない法廷で「尋問」という形式で被害の事実を話してくれました。
 その日のうちに、裁判官は判決を言い渡す日を決め、1ヶ月ほどして判決が言い渡されました。判決では、彼女と夫の離婚、そして、夫に対する慰謝料請求権とこちらの請求していた内容が全て認められるものとなっていました。判決書には、彼女を特定する情報として本籍地は記載されていましたが、住所は「秘匿」のままでした。この判決書も夫には郵送されるのですが、夫は結局、これに対しても何の反応も示さず、判決として確定することになりました。
 
 戸籍課には判決前に問い合わせしたところ、彼女の住所が記載されていなくても、本籍地で本人が特定される以上、離婚届として受理するということでした。更に、夫に対する慰謝料請求権についても、判決上は彼女を特定する住所の記載はないのですが、執行裁判所に問い合わせたところ、判決に住所の記載が無くても本人を特定する資料を別途出してもらうなど出来るので、直ちに差押えの申し立てができなくなるわけではないといわれています。
 
  DV被害にあった女性にとって、夫の意に背く意思表示をすること自体、恐怖を伴う行動になります。本件の場合、住民票を移動させてしまっていたので、技術的には非常に心配でしたが、何とか彼女の安全を確保した上で離婚に至ることができました。
 
【プライバシー保護のため、実際の事案を一部変えてあります】

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