ことのはぐさ

2022.10.10 弁護士 横山精一|婚姻費用分担の始期と養育費支払いの終期について


 夫婦が別居し、その後、離婚したような場合、婚姻費用や子どもの養育費をどのように負担するかが問題になります。

 

(婚姻費用と子どもの養育費の区別)
 夫婦が別居したような場合「婚姻費用」の分担が問題になります。これは、夫婦の収入に差がある場合、収入の少ない側が多い側に請求するものです。
 負担の対象は、子どもの養育のための費用だけではなく、収入少ない側の当事者(夫又は妻)の費用も含まれます。
 他方、養育費は、離婚後、子どもを育てることになった親から他方の親に対して、子どもの費用として請求するものです。
 そのため、夫婦の収入が同じであれば、婚姻費用の金額の方が、養育費の金額より多くなります。

 

(婚姻費用の負担はいつから認められるか)
 「婚姻費用」という名称の意味するとおり、結婚している夫婦間の間での費用の分担ですので、別居後、離婚が成立した場合には、婚姻費用の負担は終了します。
 それでは、いつから、婚姻費用の負担が認められるでしょうか?
 通常、婚姻関係にトラブルが発生した場合
①別居
②婚姻費用の請求
③家庭裁判所での調停
④離婚、別居の解消、離婚はせずに別居を解消
というプロセスをたどることが考えられます。

 

 この場合婚姻請求の負担が求められるのはどの段階でしょうか。
 別居して、一方の側からの経済的支援がなくなっている以上、他方の側には援助を求める必要性があります。その意味では、別居の時期から婚姻費用の分担を認められるべき理由があります。
 他方、負担をする側からすれば、別居してから何も請求がなく、相当の期間が過ぎてから遡って婚姻費用を請求されるとすればどうなるでしょうか。たとえば、月10万円の婚姻費用が相当であるとして、別居して1年後に婚姻費用の負担を求められたような場合はどうでしょう。過去分として、1年分である120万円を一括して支払う必要がありますが、そのようなことを想定しているでしょうか。
 このような利害状況を考慮して、婚姻費用を請求した時点から、婚姻費用の負担を認める裁判例が見られます(たとえば昭和60年12月26日東京高裁決定、令和2年11月30日宇都宮家裁審判〈判例タイムス1497号251頁〉など)。
 請求をしたことの証明のため、内容証明郵便で婚姻費用の分担を請求することをおすすめします。

 

(成人年齢の引き下げにより養育費の終期に変化があるか?)
 それでは、離婚が成立し、子どもの養育費を請求する場合、始期は離婚時になりますが、終期はいつになるでしょうか。
 当事者間に合意があればそれに従うことになります。合意に達していない場合はどうでしょう。従来、子どもが成人に達する月を終期の基準にする例がありました。また、家族の状況などから、子どもが大学、専門学校に進学する可能性が高く、親もそれを認めているような場合には、大学、専門学校を卒業する月までとする例も見かけられました。

 

 ところで、民法の改正により、2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これに伴って、養育費の終期も18歳になる月までに短縮されるのではないかという疑問が生じます。
 結論から言うと、成人年齢の引き下げにより、子どもの養育費支払いの終期が短くなることは考えにくいと思います。
 なぜならば、養育費の支払いは、子どもの生活を保持するために親が負う義務ですが、子どもが養育されるべき経済的状況は、成人年齢の引き下げにより変わることはないと考えられるからです。
 従って、少なくとも当面の間は、従来通りの基準で養育費の終期が決定されるものと思われます。


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