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ことのはぐさ

2013.11.15 弁護士 増田尚| アベノミクス雇用規制緩和を斬る① 限定正社員


 第2次安倍政権が発足し、いわゆる「アベノミクス3本の矢」の1つである成長戦略に関連して、働くルールを変える規制緩和の動きが急速に進んでいます。安倍首相は、こうした雇用規制緩和によって、「世界でもっともビジネスがしやすい環境」をつくると意気込んでいます。
 しかし、労働法規は、歴史的に見ても、弱い立場にある労働者の権利や生活、健康が損なわれないよう、企業の横暴を制限するという社会的な必要性に基づいて創設されたものです。「ブラック企業」など、労働者の権利をないがしろに、健康と生活を破壊する企業の目にあまる無法ぶりが問題になっている昨今、ルールを変えてしまうことは、時代の要請に反しているといえます。
 そこで、安倍政権が掲げる雇用規制緩和政策について、連続して、チェックしてみたいと思います。

 

 第1回は、限定正社員です。

 働き方の多様化を図る目玉として、「限定正社員」もしくは「ジョブ型正社員」を広めることが提唱されています。
 限定正社員とは、職務、勤務地、労働時間のいずれかもしくはいくつかが限定されている労働者を指すものとして、ジョブ型正社員とは、特に職務内容が明確にされている労働者を指すものとして、使われているようです。現在の正社員モデルが、職務を明確にすることなく採用され、転勤も多く、際限なく残業させられていることを前提に、これと対置されるモデルとして、限定正社員を広めようというのです。一見すると、望ましい働き方のように見えますが、すでに大手企業(正社員300人以上)の51.9%で導入されており、あえて積極活用を呼びかける背後には、別の意図が透けて見えます。

 

 規制改革会議の雇用ワーキング・グループの報告書によれば、限定正社員(ジョブ型正社員)の必要性として、①非正規社員の雇用安定、②ファミリーフレンドリーでワークライフバランスが達成できる働き方の促進、③女性の積極的な活用などを掲げています。
 ①は、改正労働契約法によって、有期契約社員が無期に転換した場合に就くモデルとして想定しているという意味です。職務・勤務地・労働時間が限定されている以上、賃金その他の労働条件において、非限定正社員と異なり低い処遇をされても仕方がないというのがホンネです。
 また、②については、非限定正社員がファミリー「アン」フレンドリーで、ワークライフ「アン」バランスな現状を変えることなく、そのような家庭生活との両立を求めるのであれば、劣等処遇を甘んじて受けよというものです。
 ③についても、結局は、女性労働者に対する不当な処遇を合理化するものでしかありません。

 

 もっとも問題なのは、このような限定正社員について、職種や勤務地がなくなれば、整理解雇も有効だとのお墨付きを与える点です。しかし、職種や勤務地が限定されているからといって、裁判例でも、整理解雇の要件の1つである解雇回避努力(特に他職や他事業所への配転によって解雇を回避できるかどうか)が緩和されるという単純な議論をしているわけではありません。 結局のところ、限定正社員は、処遇の引き下げや整理解雇を合理化するために提唱されているにすぎません。
 いま必要なのは、地位が不安定で劣悪な労働条件を強いられている非正規社員の正規化・労働条件の向上であり、際限なく働かされている正社員にも労働時間規制をはじめとする労働法規を厳格に適用していくことではないでしょうか。


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