ことのはぐさ

2023.10.11 弁護士 井上洋子|シリーズ民法改正⑥ 共有物の変更・管理(その2)


 共有物の変更・管理について、民法が改正され、改正規程が適用されるようになっています。
 その二つ目の場面をご紹介します。

 

 共有物の管理は、持分の過半数で決められます。これは改正前の民法でも同じでした。しかし改正で「共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。」という一文が加えられました。(民法252条1項)
 具体的には・・
前回利用した事例1:「父名義だった実家の建物を子ども3人が相続しました。3人で3分の1ずつの共有になっています。住んでいるのは独身で実家に残っている1人だけです。」という場合で説明します。

民法252条1項によれば、実家に居住していない2人の子があわせて3分の2の持分、すなわち過半数(半分以上)の持分を有していますから、2人の思いが一緒なら、実家の建物を管理することができることになります。たとえば、実家暮らしの1人に実家から退去してもらい、実家を貸しに出すこと(期間は3年までの限定となります。民法252条4項3号)が、住んでいる1人の同意がなくてもできてしまうのです。

 

 ずいぶんひどいことが可能になったように思えます。ただ、この場合であっても実家暮らしの1人について、父の生前から、あるいは父の死亡時の話し合いから、無料で生活を続けて良いといった話があった場合には、使用貸借契約があるものと認められますので、残り2人が住んでいる1人を追い出すことはできません。また、裁判などで争いになれば、1人を追い出して3年以下で他の人に貸し出すことの必要性・合理性と比べて、1人の住まいを維持する必要性・合理性はどうか、といった個別の事情を検討してもらえば、2人の申し出は権利の濫用であるとして、1人の居住が守られることもあるでしょう。


 このような紛争を避けるためには、日頃から共有者間の関係を円満にしておくことがより一層大切になりました。

 ただし、新規定は、事例1の1人居住者のような人たちをいじめるために作られたのではありません。
 たとえば、新規定により、建物の維持に必要な修繕や近所迷惑を防止するための建物管理などは、住んでいる人が今のままで良いと反対しても、事例1では残り2人の意向でできるようになりました。これは、建物の維持や近所との関係では有益です。
 また、相続が2代、3代にわたって生じたため、10人を超える人が共有者になっており、土地建物が放置されている、しかもそのうちの1人が音信不通で連絡がとれないという事案がたくさん生じるようになりました(いわゆる所有者不明土地といわれるもの)。そこで、管理をしやすくするための規定として民法252条1項後段、2項から4項が追加・新設されたのです。
 
 新規定ならすべて善というわけではなく、改正を検討する中でもいろいろな意見がありました。しかし、今ある民法を前提に暮らすしかない以上、知恵をしぼって、紛争を未然に防ぐ工夫が必要なように思います。そのために日頃から弁護士を活用していただければ、と思います。

 

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