交通事故にあい、比較的軽微な傷害と思い、相手方(任意保険会社)との間で示談をした後、当初の予想に反して、重大な傷害であったことが判明することがあります。
一般に、損害賠償の示談をする場合、示談書には、他に債権債務がないことを確認する、あるいは、その余の請求権を放棄する旨の清算条項が置かれるのが通常です。このような場合、被害者は一定額の支払いを受けることで満足し、被害者は、それ以上の損害が存在したとしても、あるいは、それ以降に損害が発生しても、事後的に示談金を上回る損害についての賠償を請求できないとされています。
しかし、事故による全損害を正確に把握しがたい状況の下で、早急に少額の賠償金をもって満足する旨の示談が成立した場合には、それにより放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみであり、当時予想できなかった不測の再手術や後遺症がその後発生した場合、その損害についてまで賠償請求権を放棄したとは言えないとされています(最高裁判所昭和43年3月15日判決)。
これによると、その後発生した損害が、示談当時予測できなかった場合には、その損害について請求できる可能性があります。