ことのはぐさ

2021.06.18 弁護士 古本剛之|高度プロフェッショナル制度


 会社から高度プロフェッショナル制度を適用しますと言われて同意書を書いてしまい。その後、残業代が一切支払われなくなるケースがあります。この場合、残業代を請求できないのでしょうか?

 

 高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を有する労働者で職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象に、労使委員会の決議及び労働者本人の同意などを条件に、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。つまり、これが適用されると時間外割増賃金や深夜割増賃金を一切払わなくてもよくなるという制度です。

 もっとも、その代わりに厳格な要件が設定されており、その要件を満たしていなければ高度プロフェッショナル制度が適用されず、時間外割増賃金や深夜割増賃金などを請求できることになります。また、この制度では労働者の同意が要件とされており、労働者としては一度同意してしまっても同意を撤回すればこの制度が適用されなくなり、時間外割増賃金や深夜割増賃金を請求できます。

 

 具体的な要件は以下のとおりです。

 まず、対象となる業務は

・高度の専門的知識等を必要とするもの

・その性質上、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないもの

であり、具体的には省令で以下の5つの業務とされています。

①金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

②資産運用(指図を含む。以下同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務

③有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務

④顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務

⑤新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

 

 また、対象となる労働者は、年収が1075万円以上の労働者とされています。

 そして、手続としては、まず労使委員会を設置し、この委員会で対象業務や対象労働者の範囲、対象労働者の健康管理時間を把握すること及びその把握方法、労働者に年間 104 日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えること、対象労働者の同意の撤回に関する手続などを5分の4以上の賛成で決議しないといけません。

 その上で決議を労働基準監督署長に届け出て、労働者から書面で同意をとる必要があります。

 

 すでに説明したとおり、このような要件を満たしていなければ、高度プロフェッショナル制度が適用されなくなります。

 実際に適用されている方は、要件を満たしているかなどについてまずは弁護士にご相談ください。


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