ことのはぐさ

2019.01.07 弁護士 横山精一|相続財産の範囲~賃料収入など~


 相続財産の範囲について、例をあげて説明します。亡くなった夫には、自宅のほかに賃貸アパート、預貯金、株式などの財産があります。ほかに夫を被保険者とする入院保険や生命保険などもあります。これらはすべて相続財産に含まれるのでしょうか。賃貸アパートの家賃収入も相続の対象となるでしょうか?

 

 相続の対象になる財産について、まず説明します。

 

(基本的にはすべての財産が相続の対象になる)
   民法896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」としており、原則として、亡くなった人のすべての財産が相続の対象となります。
 従って、質問の自宅や賃貸アパート、預貯金、株式などは相続の対象となります。借地権や借家権も相続の対象になります。相続するのに貸主の承諾はいりません。

 

(賃料は遺産分割協議が成立するまでは各相続人にその法定相続分に応じた権利がある)
 逆に、賃貸アパートの貸主の地位も相続の対象となります。
 それでは、賃貸アパートを遺産分割により相続した人は、被相続人が亡くなった時から遺産分割の協議が成立するまでの家賃も相続するのでしょうか。
 この点について、最高裁判所は、その間の家賃と賃貸アパートとは別の財産であると考えるべきであり、その間の家賃は、それぞれの相続人が、法定相続分に応じて取得すると判断しています。
 ですから、被相続人が亡くなってから遺産分割の協議が成立するまでは、それぞれの相続人が相続分通りの家賃を受け取る権利があることになります。

 

(預貯金について)
 預貯金も相続の対象になることはすでに述べたとおりです。この預貯金に関する権利について、最高裁は、従来、被相続人が亡くなると同時に、各相続人に法定相続分通り相続されるとしていました。しかし、平成28年12月19日、最高裁大法廷で判例変更がされ、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期預金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である」としました。ここで「遺産分割の対象となる」としているのは、相続人全員で預金等の分割について、協議を行い、協議が成立して初めて、銀行等に預金の支払いを請求できるということです。

 

(借金について)
 注意しなければならないのは権利だけではなく「義務」も相続の対象となることです。被相続人の借金、保証人としての債務も相続の対象になります。

 

(生命保険・入院保険)
 生命保険金の受給権は、保険契約に基づいて指定された受取人の固有の権利であり、相続の対象ではありません。生命保険金の受取人が亡くなった人の相続人であっても、同じことになります。従って、受取人である相続人は相続を放棄しても、生命保険金を受け取る権利は残ります。これは、被相続人が生前借金をしており、相続放棄をしなければ借金を相続するような場合に重要になります。このような場合、生命保険金の受取人である相続人は、相続の放棄をして借金の支払義務を免れた上で、生命保険金を受け取ることができることになりますが、生命保険金の受給権が受取人固有の権利である以上、法律上何ら矛盾しないのです。
 他方、入院保険の保険金は、入院した人に受け取る権利がありますので、その人が亡くなった場合には、その保険金は相続の対象となります。この場合には、相続放棄をした相続人は、その保険金を受け取る権利はありません。


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