被相続人の財産形成に協力した者とそうでない者の間では、法定相続分どおりでは実質的な不公平が生ずる場合があります。たとえば、親と同居して家業を手伝い、親の財産形成を手伝ってきた長男夫婦と、そのような支援をしてこなかった次男がいたケースを考えてみましょう。親が亡くなり相続が発生すると、子である長男と次男、どちらも法定相続分は均等となります。しかし、親が生前に、法律の規定により遺言をすることで、それを変え、長男の取り分を多くすることができます。また、長男の妻に対しても遺言をすることで、一定の財産を与えることができます。
遺言がされなかった場合でも、長男については「寄与分」、長男の妻について「特別寄与料」という制度があります。
(1)寄与分
生前に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養監護その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした者があるときは、この寄与分はその寄与をした相続人が取得し、その余の相続財産を寄与者を含めた相続人が法定相続分に よって分けることとなります。
寄与分の有無や額について争いがあるときは、寄与分を求める相続人が家庭裁判所での審判で決めてもらうことができます。なお、2023年4月の法改正により、寄与分の請求ができるのは、相続発生から10年以内とされています。詳しくは、弁護士に相談してみてください。
(2)特別寄与料
2019年7月から、相続人以外の親族の貢献に報いるために「特別寄与料」の制度が設けられました。
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の相続人以外の親族は、相続の開始後、相続人に対し、「特別寄与料」(寄与に応じた額の金銭)の請求をすることができます。
この場合、相続人と特別寄与料を請求した親族との間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に金額を決めるよう申し立てることができ、家庭裁判所は、双方から事情を聴き、寄与の時期、方法、程度などを考慮して金額を決定します。
ただし、原則として、相続開始後6か月以内に請求する必要があることに注意が必要です。