賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないと定められています(労働基準法24条1項本文)。したがって、使用者が、労働者に対する債権と一方的に相殺すること(天引き)は許されません。また、前借金との相殺も禁止されています(労働契約法17条)。
もっとも、労働者が同意をしている場合には、天引きも許されますが、この同意が有効とされるには、労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要となり、厳格かつ慎重に判断されなければなりません。