ことのはぐさ

2015.03.09 弁護士 峯田和子 | 先物取引の勧誘規制緩和?!


 皆さんは、先物取引というものをご存じでしょうか。これは本来、米や大豆、石油などの原料を使って商品を作る人達が、原料価格の上下があっても商品価格 をそうそう変えることができないので、将来その原料を売買する権利を売り買いしておいて原料価格の高騰による不利益を回避するために作られた取引です。
 日本にも先物取引市場というものがあって、新聞の株価欄の近くに別枠で小さく商品価格が報道されているでしょう。
 この取引、本来は製造業者のリスクヘッジのためのもの。ところが、日本の先物取引市場は海外の市場と異なり、一般投資家の占める割合が非常に多く、一般投資家の被害が後を絶たなかったのです。
 先物取引では原資の何倍もの価格のやり取りをするので、利益が出る時は大きいですが損失ができる時も非常に高額。取引を始めると業者から一日に何回も電話がかかり「米の値段が上がりそうだ、買いを○玉建てるがいいか」といった判断を個々迫られます。しかし、一般の人に米の相場が上がるのかどうかなんて分かるものではありません。結局、業者から言われるままに取引を進めてしまうのですが、業者は何度も取引をして貰えば貰うだけ儲かる仕組みなので、その取引 回数たるやものすごいものになってきます。そして、専門家なのだからと信頼して取引をしていると、気がつけば莫大な損失を被っているという訳です。
 私が弁護士に登録した平成16年当時は非常にそうした相談が多く、業者を相手として何件も損害賠償請求訴訟を提起しました。裁判になってみると、如何に業者の営業担当者がろくな根拠もないまま、予想を立てて取引の勧誘をしているのか思い知らされることになります。まさに「当たるも八卦当たらぬも八卦」という感じ。しかし、業者からすれば、あくまでも取引の判断をしていたのは、顧客であって自分達ではない。確かに契約上は委託していただけなので、日本人的 な「専門家へのお任せ」感覚など通用しないのです。特に高齢者は老後への不安から大概勧誘に応じてしまい、なけなしの資金を奪われていました。
 そんな中、あまりに一般投資家の被害が多いことから、平成23年(2011年)、原則として不招請勧誘が禁止されました。つまり、呼ばれてもいないの に、電話や訪問で飛び込み営業をして、勧誘してはならないということです。それ以降、当たり前ですが日本における先物取引の取引量は格段に減少し、私も被害者の相談を受けることが少なくなりました。そうすると未発行株式詐欺などその他の手口が横行し始めましたけれど、少なくとも先物取引被害は減ったので す。
 ところが、ここに来て政府は、今年の6月からこの規制を緩和すると言いだしています。もうけの減った業者が泣きついたのでしょう。政府も年金も怪しいのだから老後の蓄えは自己責任でとでも言いたいのでしょうか。日弁連は当然、緩和に対して反対の意見を出しています。まだ、具体的な緩和の内容は明らかにされていませんが、また先物被害の相談を受ける日が来ないよう祈っています。


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